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昨今のキレイなテレビに秘められた苦難の歴史! 貴方は知っているか?
本書は一言で言えば「プロジェクトX」のような薄型テレビにまつわる技術開発史だ。しかし、昨今家電量販店に並ぶどれもこれもキレイな薄型テレビの大群を見ていてどれだけの人がつい7、8年前まで薄型テレビの画質が目を覆うほど汚かったということを知っているだろうか。また、ブラウン管型テレビは最後に出た頃の高級機は現在の薄型テレビとほぼ同等なくらい画質は奇麗だったということを知っているだろうか。それに追いつき、追い越すためにプラズマ・液晶といった薄型ディスプレイの開発者たちがどれほど苦闘を重ねたか…。テレビに限らずだが、製品というものは放っておけばそのうち安く、高性能になるわけではない。陰で日夜競争に曝され、試行錯誤を重ねる技術者たちが必ずいるのだ。
薄型テレビに立ちはだかるブラウン管画質の壁、視野角が狭い・動画がボケる・黒が浮く、という「液晶三悪」をいかに克服するかという戦い。液晶より有利なはずなのに現実には液晶以上に難航したプラズマディスプレイの画質改善、特に黒の表現力の無さ。現在のディスプレイに不可欠な画質改善のためのデジタル回路の開発、単に「見せる」から「表現する」への進化…。
そしてさらに次世代の表示装置として期待されている有機EL、SEDやFEDの開発の歴史と挫折、テレビの未来として期待されているフルHDを超える4K×2Kやスーパーハイビジョン、ハリウッドを中心に急速に盛り上がる3D(立体映像)への期待と実情…といった「映像」にまつわるドラマが満載の充実の内容だ。ただ、当然ながら専門用語は多く、理解し共感するにはそれなりの映像に関する予備知識は必要だろう。映像に関するこだわりをもつ人、理科系・技術系の話が好きな人にはとても面白い内容だ。最先端テレビ開発の舞台裏:「表示」から「表現」へのパラダイムシフトを起こす技術者たち
最先端の高画質テレビ(液晶、プラズマ、ポスト液晶 (有機EL, FED, SED)、近未来のテレビ)の研究開発の舞台裏をAV評論の第一人者・麻倉怜士氏が徹底取材しています。パネルデバイスと画像処理の研究開発の裏話が満載です。パネルデバイス・画像処理のどちらも"高画質"に対応できるはずであっても、お互いの長所・短所を知り尽くした上で組み合わせないと自然な画像にならないそうです。高画質を実現するために腐心したエンジニア達の生の声が読めます。
また、他社・他機種テレビと差異化するために、エンジニア達がテレビ映像の「表示」だけでは満足せず、視聴者を感動させるような映像の「表現」方法の研究開発に勤しんでいる様子が詳説されています。特に「明暗順応」と「色順応」のような人の視覚を考慮した上でテレビ映像の表現を自動調節している話には感心しました。(「心をつくる―脳が生みだす心の世界」でも出てきた視覚・認識の話が実際のテレビの技術開発でも生かされているんですね) "Contentsの表示"から"Contextの表現"へのパラダイムシフトが起きているんですね。(このような高機能化は他のデバイス開発でも起きていますね。例えばデジカメ(ポスト"画素数競争")) 。
本書を通読して、「日本のモノづくり此処にあり!」という実に爽快な気分になりました。今度からテレビ売り場を巡る時に本書の視点でジックリ観察してみようと思いました。(^-^)
本書では専門用語が遠慮なく飛び交い、かつ、実際のデバイスの仕組みを説明する図が全くありませんので、本書を読み通すにはある程度の予備知識を他書で抑えておく必要がありそうです。(例えば「図解入門 よくわかる最新ディスプレイ技術の基本と仕組み」「カラー図解でわかる 大画面・薄型ディスプレイの疑問100」「図解 次世代ディスプレイがわかる」などの解説書が手元にあると読み易くなるでしょう)