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フォーク・ロックをやってきた経歴にとらわれない数々のすばらしいアルバムの後にリリースとなった『Old Kit Bag』は、リチャード・トンプソンがみずからのルーツであるインディー・レーベルの世界へ回帰したことを告げる作品だ。ジョン・ハイアットやブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマと組んだことで知られるJohn Chelewのプロデュースにより、本作はオーヴァーダブを最小限に抑え、少人数のミュージシャン（ダブル・ベースのダニー・トンプソン、ドラムのマイケル・ジェローム、バック・ヴォーカルのジュディス・オーウェン）と共に短期間でレコーディングされた。このような無駄のないアプローチはトンプソンにとって吉と出た。何しろトンプソンは、力強く、多彩な作風をもつソングライターであるばかりか、きわめて個性的なギタリストでもあるのだから。 長年のファンなら、スナックをつまむように気軽に音楽の中へと入っていけるだろう――泣かせるバラード「Happy Days and Auld Lang Syne」、エネルギッシュでロックな曲「I'll Tag Along」、憂うつで物悲しい「First Breath」、いずれも魅力的だ。だが、さらに深く聴きこめば、華麗なジャズ・ポップ・バラード「I've Got No Right to Have It All」や義憤に満ちた「Outside of the Inside」の、より微妙な味わいも分かってくる。後者では、敬けんなイスラム教徒であるトンプソンが、モラルの欠如した狂信的な宗教家たちを攻撃している。 フェアポート・コンヴェンションのメンバーとしてデビューしてから35年。トンプソンのアイデアと意志は、まだ尽きていないことが証明された。自分自身と世界に対する彼の挑戦は、いまも続いているのだ。（Keith Moerer, Amazon.com）

文句なしの快作！
前作「モック・テューダー」から３年半ぶりにリリースされたリチャード・トンプソンの新作。基本的には、時に軽やかに時には轟音で唸るトンプソンの変幻自在のギター、盟友ダニー・トンプソンの図太いウッドベース、タイトなマイケル・ジェロームのドラムのトリオで構成されており、そこに数曲で女声のコーラスが加わるといったシンプルなもの。
トンプソンは1949年生まれというから、今年で５６歳。しかし、サウンドは枯れた味わいとかそういったものを感じさせない、力強く、生き生きした、引き締まったものだ。シンプルな編成で本当に広がりがあって説得力のあるサウンドを生み出す力量はさすがだ。
トンプソンのアルバムにはおよそ駄作というものがないが、本盤は近年メジャーからリリースされたトンプソンのアルバムの中では抜きんでた傑作ではないかと思う。
そのほか、彼自身のレーベルからはこれまた素晴らしいライブ盤などが精力的にリリースされていて、日本盤のボーナストラックの"So Ben Mi Ca Bon Tempo"は、そうしたライブ盤の一枚、"1000 Years of Popular Music"の中の１曲です。
それにしても、超ベテランの域に達しても相変わらず、こんなにもかっこよく、力強い作品を生み出し続けるトンプソンのような存在は本当に心強く、勇気づけられる。